前回引き合いに出した『夢を売る男』が本命で、これはついでというかたまたまその時お買い得価格になっていたから買ったもの。言い訳する必要は全然ないんだけど。
それにしても、5年くらい前に読んだような……という曖昧な記憶だけで19編ものショートショートのどれ一つとして憶えていない残念な私の脳みそよ。
再読してみれば、どれも短いながらシニカルな内容、そして最後の一文でガビーーン! となる仕掛けがアニメ『謎の老婆』や『笑ゥせぇるすまん』を想起させる。こういう毒っ気のあるものは私の大好物。
そういえばこの最終ページに強烈な一文だけでお見舞いするやり方は『ルビンの壺が割れた』(宿野かほる著)と同じだ。
というか、こっちの方が先(単行本は2011年刊行)だったのね。
それはいいとして。
どの話も、身近な人の「隠し事」がテーマになっている。
父の、母の、夫の、妻の、友人の、秘密が明かされてガビーーン! なのだ。
誰にでも一つや二つ、秘密くらいあるだろう。
深刻なものからそうでもないものも含め、たいていは他人に知れたら恥ずかしい(何を恥ずかしいと感じるか、どんな種類の恥ずかしさか、人それぞれにせよ)という羞恥心がベースにあると思う。
が、この短編集では秘密が武器になっている。
「実は○○」の○○が、他人に打撃を与える。
打撃というのはつまり、信じていたことがまったくの幻想だったと知ることによって裏切られた思いになることを指す。
では、私がある日突然知ってショックを受ける秘密って、あるのだろうか。
あるとしたら、誰の、どんな?
むくむくと妄想が拡がる。
秘密1.実は私は父が妾に産ませた子であり、私が母親と思っている人(ジャイアン)
とは実の母娘ではない。
――驚きはするけどショックよりも父に妾がいるわけがないという疑いの方が強く、万が一それが事実だったとしても、今さら知ったところで私の母に対する愛は変わらないだろう。→却下
秘密2.ではその愛する母が実は過去に殺人を犯していて、今なお逃亡中の身である。
――これはなかなかの衝撃だけど、やはり母が私に注いでくれた愛に変わりはないし、むしろ全力で逃亡に協力させていただく。→却下
秘密3.実は私の両親は宇宙人である。即ち私も宇宙人である。
――自分の小学生レベルの想像力の方がショックだ。
秘密4.過去の恋人が全員浮気していた。
……もはやどうでもいいな (-_-)
話を戻すと、どれもアニメを観るように軽く読める話ばかりなので、隙間時間にちまちま読むのにちょうど良かった。
が、読んでいくうちにオチを推測できるようにもなっていくので、後半にいくにつれて刺激が弱まり、「もっと強いのくれよー」と要求しはじめる自分がちょっと怖くもあった。