乱読家ですが、何か?

読書メーターで書ききれないことを残すためのブログです。

#168  アパートの殺人  平林初之輔著

お前は、誰だ。と言い放っておきながら、私が知らないだけで実は超有名人の可能性もあるので調べてみたら、この人も探偵小説を書いていた。 乱歩大先生のことをあんなにこきおろしているのだから、たいそう面白い探偵小説を書いているんでしょうね。そうじゃ…

#167 乱歩氏の諸作/日本の近代的探偵小説ー特に江戸川乱歩氏に就てー  平林初之輔著

私は今怒っている。 頭のてっぺんからプンプン音がしそうなくらい、怒っている。 なぜならこの平林某が、私の敬愛する江戸川乱歩大先生を批判しているからだ。 江戸川乱歩といえば、私の読書歴において絶対に外すことのできない、人生を変えられたと言っても…

#166 夫婦茶碗  町田康著

愛すべき屑男を書いた名作。 屑とはなんぞや。定義は人それぞれ。 所謂「飲む打つ買う」がその典型ではあるが、この小説の主人公はまあとにかく働かない屑。 しばらく働いたとしても、すぐ辞める。即ち生活力に欠ける屑。 なのに憎めない、むしろ可愛いいと…

#165 ユーチューバー  村上龍著

村上龍の最新刊となったら入手必須。しかも紙の本で。 とはいえ、そうタイミングよく古本屋にあるかどうかは運次第。 過剰に期待しないようダメ元ぐらいに気持ちを抑え気味で行ったら、黄色い背表紙が新刊コーナーにしっかり並んでいるではないか。 海を越え…

#164 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ  本谷有希子著

『子どものための哲学対話』の感想の最後に書いた、「別の本」がこれ。 この感想をまとめようとしていた時にたまたま観たイチローのインタビュー動画の中に、「自己肯定感の高め方」をテーマとしているものがあった。 インタビュアーの女性が、「どうしたら…

#163 子どものための哲学対話  永井均著

「ペネトレ」という名のおかしな猫と「ぼく」との対話形式で語られているので、まさに「子どものための」という感じになっているものの、実際は、子どもの頭を忘れてしまった大人のための哲学書というところか。 大人でも「なぜ?」と思うようなことや、思う…

#162 風の歌を聴け  村上春樹著

英国人の友人と読書について話していた時のこと。 彼はインドでこの本を見つけて読み始めたのだけど、つまらな過ぎて途中で投げ出したのだと言った。 お互い村上春樹のいくつかを読んでいて、以前にも村上春樹の作品や著者本人についてあれこれ語り合ったこ…

#161 質問力  齋藤孝著

いわば会話というのは質問と応答、ほぼそれだけで成り立っていると言える。 昨日何してたの? のような軽い問いかけもあれば、死についてどう思うか? などの重いものもある。 自分事や説教じみた持論を一方的に話す場合もあるにせよ、結局その後には「で、…

#160 犬のかたちをしているもの  高瀬隼子著

ミナシロ! お前!! 何度も何度も大声を出したくなった。 理不尽だ。理不尽だ。理不尽だ。 こんな話よく書いたな。 それは、よくぞ書いてくれたという意味でもあって、昨年読んだ本の中で最も感情を揺さぶられた一冊だった。 なのに、だからこそ、なかなか…

#159 メランコリア  村上龍著

またヤザキの長い独白が始まった。 『エクスタシー』で、「ゴッホがなぜ自分の耳を切ったか、わかるかい?」と話しかけてきたNYのホームレス。それがヤザキだ。 『エクスタシー』はカタオカケイコの語りがメインだったが、『メランコリア』はほとんどがヤザ…

#158 やっぱり私は嫌われる  ビートたけし著

私の中では「タケちゃんマンだった人」で「フライデー事件の人」でしかなかったのが、いつの間にか世界のキタノとか言われるようになり、さすが! みたいな扱いになっていることにずっと納得がいっていなかった。 お笑い芸人としても、映画監督としても、俳…

#157 風の便り  太宰治著

38歳の小説家と50を越えた先輩作家の往復書簡。 明らかに太宰治本人を思わせるこじらせた若輩者(木戸一郎)と、それを諫めたり突き放したり時に褒めたりする先輩(井原退蔵)のやり取りが全て手紙形式になってる。 木戸は自己承認欲求の塊みたいな男で、愚…

#156 悪女について  有吉佐和子著

最近ハマっている小田切ヒロさんが紹介していた本の中の一冊。 小田切さんは「まだ読み始めたところ」とのことで、お薦めというよりはこんなの読んでますというコメントに留められていたけれど、好きな人がどんな本を読んでいるかというのは気になるもの。 …

#155 死の壁  養老孟司著

「死」というと、とんでもなく壮大なテーマに聞こえる。 哲学的に語ることもできれば、スピリチュアル方面、医学的生物学的見地、宗教観、様々な切り口がある。 ただ、どの角度から見ようとも、私たちヒトを含めた生物はみな生まれた時から必ず訪れる死に向…

#154 諦めない女  桂望実著

母親はこうあるべきという呪縛の強さというのは、他の小説を読んでいても感じることがあるし、実社会でもまだまだこの種の幻想が蔓延していると思うことがよくある。 『坂の途中の家』(角田光代著)の里沙子も、「母親なんだから」というプレッシャーに苦し…

#153 白  芥川龍之介著 

たまたま読書メーターで見かけて、白い何の話なのかと思いつつ読み始めたら、白い毛で白という名の犬目線の話だった。 白が、ある事件を機に黒になり、また白になる。 というと童話っぽく聞こえるが、単に犬の毛色の話ではないように思えた。 一般的には白=…

#152 逆さに吊るされた男  田口ランディ著

オウム真理教の元死刑囚・林泰男の外部交流者として面会を続けた著者が書いた、小説の形をとったドキュメンタリー。 あの地下鉄サリン事件の時、他の実行犯メンバーよりひとつ多くの袋を担当し、何度も傘でサリンの入った袋を突き刺した林を、世間は「殺人マ…

#151 桃太郎  芥川龍之介著

日本で育った者ならば、昔話といえば桃太郎を真っ先に思い浮かべる人が圧倒的大多数だろう。 そのくらい有名な桃太郎。桃から生まれた桃太郎。犬猿雉を連れて鬼ヶ島へゆき、果敢に鬼退治をした正義の味方、桃太郎。 しかーし 芥川龍之介にかかれば、スーパー…

#150 傲慢と善良  辻村深月著

婚活サイトで出会った婚約者が突然姿を消した。 彼女がほのめかしていたストーカーが絡んでいるのか、はたまた…… 外枠はミステリで中身は婚活というキャッチ―なトピック。 巧妙な仕様にまんまと私も乗っかって読んだ。 とはいえ、帯に「人生で一番刺さった小…

#149 秘祭  石原慎太郎著

私は著者をはじめ石原家のことも、ひいては石原軍団についてもほとんど知識がない。 なので、友人からこの本をもらわなければ一生石原慎太郎が書いたものを読んでみようという発想はなかったかもしれない。 都知事だったことはさすがに知っていた(一応都民…

#148 fishy  金原ひとみ著

某女優のW不倫で世間が騒がしい。 有名人の不倫が暴露される度に、「当事者の問題」であり「家族や関係者に謝罪すればいいこと」という意見が出てくるにもかかわらず、やっぱり外野から大衆はやいのやいの言っている。 私も大衆の一人としてネットニュースを…

#147 コメント力  齋藤孝著

著者は、長い文章はコメントではないと定義しているが、私はいうなればこの感想文もある本(時々映画)に対するコメントだと思っている。 「良かった」「面白かった」だけでは何の意味もないので、自分が感じたこと、紐づいて思い出したこと、常々考えていた…

#146 グーグーだって猫である1  大島弓子著

「差し当たり実現不可」のラベルを貼って封印している犬猫(を飼いたい)熱が再燃してしまうじゃないのーーー と、叫びたくなるような猫との暮らしを描いたエッセイ漫画。 グーグーの変な行動や、翻弄される飼い主(著者)の姿をにやにやしながら読み、また…

【映画】砂の女

小説『砂の女』が映画になっているというのを聞いた時は、あの砂の世界を一体どうやって映像化したのか(そんなことが可能なのか)と半信半疑でいたのだけど、運良くYouTubeで観ることができた。 日本で砂丘といえば、行ったことはなくてもまず鳥取砂丘が思…

#145 砂の女  安部公房著

昆虫採集を趣味にしている男が、珍しい昆虫を探しに行った先で起こる摩訶不思議な出来事。 迷い込んだ砂丘にある部落で、終バスを逃しやむなく滞在することになったのだけど、とにかく砂まみれの土地に戸惑う男。 対してその家に住む女は、砂のある日常にも…

【映画】The First SLAM DUNK

エモーーーーーー エモいという言葉はまさにこの映画を観た時のために用意されていたのではないかと本気で思うくらい、エモいとしかいいようのない感覚に最初から最後まで、否、一週間経っても消えないままだ。 漫画がクラス内で出回り、授業中机の下でこっ…

#144 朝夕  林芙美子著

あれ? この二人は別れ話をしているんじゃなかったっけ? 店の経営もままならず、もうお互い別々にやり直しましょうという流れから、なぜ温泉に行こう! なんて発想になるのか。やぶれかぶれにも程があると、突っ込みどころ満載。 林芙美子の作品の多くが、…

#143 夏物語  川上未映子著

第一部は『乳と卵』(同著者)のあの二〇〇八年の夏の3日間を掘り下げた物語。 第二部はその8年後の二〇一六年夏~二〇一九年夏のことが書かれている。 性のことが軸となって、家族、恋、仕事、女同士の人間関係などがぎゅっと濃く詰まっていて、つまり人生…

#142 中年だって生きている  酒井順子著

先月私は48歳になった。36の年女ではなく48の年女。 思えば遠くへ来たもんだの心境で、もうすっかり自分が中年であることを認めている。 けれどもまだ心のどこかに若さにしがみつきたい思いがあることも自覚している。 自らをおばさん扱いする(ことで笑いを…

#141 黒猫  エドガー・アラン・ポー著

ごく短い話の内容も、なぜ読んだのかもいつもの如く忘れていたのだけど、読友さんが読んでいたのを見て、どんな話だったか思い出すために再読してみた。 これは、ある男が、絞首刑で明日死ぬという状況で残した手記。 子供の頃から動物好きだった彼は、大人…