乱読家ですが、何か?

読書メーターで書ききれないことを残すためのブログです。

2020-01-01から1年間の記事一覧

#60 下町  林芙美子著

林芙美子祭りは続いている。 一か月くらいでごく短いものを三つ四つ読んだけれど、著者はずっと女の幸せってなんだろうと問い続けていた人なんじゃないか、そう思う作品ばかりだった。 『婚期』のこじらせ登美子も、『リラの女達』の女給たちも、『清貧の書…

#59 おばさん未満  酒井順子著

これは、ちょうど著者が今の私くらいの年齢で書かれたもの。なので、同じ世代の目線で読み、40代という微妙な年齢についてあれこれ考えた。 よく、テレビや雑誌で妙齢の女性(女優なりタレントなり)が生き生きと「40代って楽しいわよ~」みたいなことを…

#58 清貧の書  林芙美子著

この短編は、昭和初期の『だめんず・うぉ~か~』として読んだ。 冒頭から母親に「おとこうんがわるうて」(注:本文では傍点付)と嘆かれている、そして本当に男運が悪いというか、だめんずに弱い主人公。 私はその男と二年ほど連れ添っていたけれど、肋骨…

#57 人間失格  太宰治著

私の読書史上、再読回数断トツ1位の作品。 自分は、わざと出来るだけ厳粛な顔をして、鉄棒めがけて、えいっと叫んで飛び、そのまま幅跳びのように前方へ飛んでしまって、砂地にドスンと尻餅をつきました。すべて、計画的な失敗でした。果たして皆の大笑いに…

#56 「リラ」の女達  林芙美子著

舞台は銀座の料理屋「リラ」。 料理屋といってもレストランではない。 女給(要はホステス)がいて、客は男ばかり。今でいうキャバクラというところだろうか。 しかしそこに繰り広げられるのは華やかで煌びやかな夜の世界とは遠い、憂いの色濃い現実ばかり。…

#55 婚期  林芙美子著

読書家の友人が最近この著者にハマっていて、楽しそうに読んでいる。 私にとっては、だいぶ前に『放浪記』を読んだ朧げな記憶と、同作の舞台のイメージだけが矢鱈と強く、そんなに面白いものを書く作家という認識はなかった。 けれど友人の書いている感想が…