乱読家ですが、何か?

読書メーターで書ききれないことを残すためのブログです。

#59 おばさん未満  酒井順子著

  

 これは、ちょうど著者が今の私くらいの年齢で書かれたもの。なので、同じ世代の目線で読み、40代という微妙な年齢についてあれこれ考えた。

 

 よく、テレビや雑誌で妙齢の女性(女優なりタレントなり)が生き生きと「40代って楽しいわよ~」みたいなことを言うのを目にしてきたけれど、いざ自分がなってみるとどう考えても30代の方が良かった! ということだらけ。

 以来、あの手の「自然体トーク」は“まだまだ私はイケてるのよ”という見栄と強がりが大いに混ざっていることを差し引いて見るようにしている。

 

 

 そう、私は厄介な年ごろになった自身の扱いに困っているのだ。

 

 

 40代になると、まず身体の変化が半端ない。

 白髪シミシワなどのわかりやすいものにはじまり、首から下にも「エェッ! こんなところがこんなことに!?」と、ほんの1、2年前にはなかった現象が次から次へと現れる。

 

「弛みって何? どーゆうこと?」と、アンチエイジングに勤しむ母(当時40代)に無邪気に問うていたティーンエイジャーの私よ。

 重力というのは確かに存在するのだよ。

 

 若者には絶対にわからない微かな変化への気付きは、本書でも『髪』『腹』『口』など部位別に語られ、同時に似合わなくなっていくものについても『服』『冠婚葬祭』で触れている。

 

 それらの目に見える衰えは、なにも私だけに起こることではない。全人類みな平等に通る道だとわかっている。わかっちゃいるけどそう簡単には諦められないのが40代。

 本当はもうしっかり中年なのに、「若者と中年の間」くらいにしか許容できず、往生際が悪いったらない。

 それでちゃっかり若者寄りに立ってしまったりもするのだけど、そうすると即座に「痛いおばさん」に認定されてしまうという本当に残念な年齢である。

 

 まあこの類のことは、ジェーン・スーさんや他のアラフォー系エッセイでもさんざん擦られているネタなので今更多くを語るまでもない。

 

  

 この本で面白かったのは、見た目以外の部分で「若者に恐がられる」ことにフォーカスしている『恐れ』の章。

  

四十女が恐がられる理由というのは、確かにあるのです。彼女達は、色々な意味において経験値が高いため、つい何かと相手のアラに気付いてしまいがち。さらには年齢とともに図太さとか老婆心(まさに)も身についてきているため、そのアラをいちいち指摘してしまう。すると、

「あの人、恐い」

ということになってしまう。

 

 

 気付きたいわけじゃなくても気付いてしまう無駄に高い経験値。プラス、少し前ならスルーできていたことをスルーできない(あるいは、敢えてしない)妙な正義感。

 決してモラリストではなかったはずの私にもあるこの正義感というやつが厄介で、指摘する側からすれば“良かれと思って”のことでも、周囲にとっては余計なお世話だ。理詰めの忠告や注意に隙がなければないほど、「恐い」と思われるだろう。

 

 

 自分の若い頃を思い出せばさんざん鬱陶しく感じていたことを、「世直しです!」みたいな顔でしてしまうのは、まぎれもなく「口うるさいおばさん」化の一つだと思う(この先に、電車で足を組む若者を杖で突つく爺さんみたいな行動がある)ので、寛容にスルーする技を身に付けるべし、と肝に銘じる。

 

 もともと私は昔(中学で始まった部活時代)から年下に助言とか指導をすることが苦手で、そこに中年女のアラ探しが加わってしまったら最悪じゃないか。

 

 それは丁度、著者が若者から恐れられる40代を3つに分類している「おふくろタイプ」「アネゴタイプ」「お嬢タイプ」のうち「お嬢タイプ」にあたる。

 

お嬢タイプというのは、社会という集団の中で、いつまでも「恐がる側」、つまり無責任な側に立つお嬢ちゃまのままでいたいのです。しかし自分の中に図らずも蓄積されてしまった経験値がそれを許さず、恐さの片鱗がチラみえしてしまう。

 

 私の場合、「お嬢タイプ」というより正確には「末っ子タイプ」という方がしっくりくる。

 生まれた時から家族の中で「いちばん小さい人」として扱われてきたが故に、年下の世話というものに慣れていない。

 飴と鞭の使い方がよくわからないし、加減も上手にできない。やろうとすると、なんだか中途半端になる上に、「こんな私が何を偉そうに」という引け目のようなものがある。

 

 

 あーあ。

 恐くもなく、痛くもない、理想の中年女ってどんな人だろう。そうなるには、いったいどうすればいいんだろう。

 

 こんな問答をしている間に気がつけば50を過ぎ60も過ぎ、あなたとっくに高齢者ですよ、なんてことになりかねないなあ。