頭の中がせわしなく落ち着かない日々が続いていて、ろくに本も読んでいない。
時間が無いのでは決してない。ぼけーっとする時間もあればだらだらとYouTubeを見る時間も確実にある。なのに、活字が織り成す物語には入り込めない。
いくら好きでもこんな状態で中村文則なんて読んだら多分脳みそが悲鳴をあげるだろうな。
そんな時にうってつけなのが、トレンディドラマ感覚で読める林真理子。
ということで選ばれたのがこの『花探し』。
主人公は、バブル期に不動産王の愛人となり、バブルが崩壊しても次の愛人に高級マンションと潤沢な買い物資金を与えられて暮らす舞衣子。
OKバブリ~~
本当にバブルって崩壊したの? と思わず疑ってしまうキラキラでギラギラな愛人生活。頭の中で終始平野ノラのおったまげ~が木霊する。
麻布や表参道のようなハイクラスな街で繰り広げられる男と女の駆け引き。その隙間を埋めるラインストーンみたいに散りばめられたエルメスやらショーメやらディオールやらロレックスやらベンツやら。とにかくバブリーなアイテムがてんこ盛りで胃もたれしそう。
ここまでいくともはや漫画かコントじゃん。
そう思えるくらいのステレオタイプな描写は笑うしかない。
だが当の舞衣子はいたって真剣そのもの。
現在の愛人との別れの気配を感じ、切られるくらいなら自分から、と新たな男を探す活動に余念がない。
プロの愛人の転職活動記
副業愛人(銀座のクラブホステスとか)とはわけが違って、生活丸ごとがかかっているのだから、そりゃあ鼻息も荒くなるわな。
男との別れは解雇を意味するし、新しい男(転職先)が見つからなければ即刻無職(無収入)になるわけで。しかも今の生活レベルを落としたくないとなれば可成りの条件の人物を取り込まなければならない。
その意気込みは十分伝わってくるけれど、舞衣子がやっていること――美を保つためのボディケアとか会話中の駆け引きとか――は、そこらのお嬢さんたちもやっていそうな範疇を出ることがなく、まったく物足りなかった。
どうせなら、これぞプロ! と舌を巻くような匠の技でもって素人どもとは別格であるところを見せつけて欲しかった。
それはさておき、これを読みながら最近やたらと目につく「パパ活」という言葉の卑しい軽さを思い出していた。
前にも書いたことがあるが、私は、不倫したい人はすればいいと思っている。だから、舞衣子のような職業=愛人という人に対してもとくに抵抗はない。
その基本的な考えはパパ活をしている人にも同じで、したければすれば、という第三者目線しかない。
それは不倫や売春を良いものだと思っているということではなくて、リスクを背負うのも後悔するのも(しないのも)本人の問題だということだ。
ただ、私はどうしても言葉に反応をする性質なので、「売春」が「援交」にすり替わった時以上にこの「パパ活」という言葉にもやもやとした思いを持っている。
行為そのものよりもコーティングに対する反発だと思う。
その響きのポップさで核心を誤魔化そうとする方向性と、「就活」「婚活」の流れに乗っかるようなやり口が気に入らない。卑しいし、嫌らしいし、ダサい。
実際にその活動をしている女の子に会ったことはないし会うこともなさそうだけど、どんなにカラフルなコーティングをされていてもm&m'sの中身は黒いように、その活動はセックスとお金の交換であるという事実からは目を逸らさないでいてほしい。
楽してお金が稼げたら、そりゃあいいよ。私だってしたいよ。でも世の中そんなオイシイ話はないのだよ。ねえ。