日本から届いた数冊の本のうち、この一冊だけなんだか断面がギザギザしている。
ん? と思ってよく見ると、数枚ずつ袋とじされているのがわかった。
表紙にはタイトルより大きく取扱注意の文字。横には「消える短編集入ってます!」とある。
さらに帯にはこの本の読み方が丁寧に書いてある。
まず袋とじされている状態で短編小説が、そして袋を切り開くと長編が現れるという仕組み。
ナニコレ!
世の中には無数の書籍が存在するけれど、こんなの初めて。
それだけでもうこの本は価値がある。
子供の頃、『はらぺこあおむし』の穴や、飛び出す絵本にわくわくしたあの高揚感が、大人用の字だけの本でも蘇るなんて。
しかも、当たり前だけどただ袋とじされていればいいというのではなく、短編・長編どちらも成立し得る文を計算された文字数で編んでいくということが可能であることにただただ驚いた。
物語を構想して書くという作業以上に、ものすごく難しい計算問題を解きパズルを完成させる方がどれだけ頭を悩ませることか、想像するだけで気が狂いそうになる。
話の内容がどうというのはもはや二の次。
こんな実験的なことをやろうと思い、やった、やってのけた、そのことがすごい。
それにしても、ぴりぴりと袋とじを開けるなんて、一体何年ぶりのことだろう?
男性ならセクシーなグラビア写真を開けた経験を思い出すのかもしれないけれど、それがない私は、幼少期まで遡り工作的なドキドキ感で紙を切っていった。
南国で袋とじにカッターをあてている
ふとそんな自分の姿がシュールに思えた。