乱読家ですが、何か?

読書メーターで書ききれないことを残すためのブログです。

#24 モンスター  百田尚樹著

 

 これは、タイトルの通り「モンスター」と呼ばれるくらい醜い少女・和子が、後に整形手術を繰り返した結果完璧な美を手に入れ、それまで彼女を虐げてきた男たち、男に限らず見た目の美醜で容赦なく差別の矢を放つこの世の中全般への復讐劇である。

 

 

 女+男三人という構図だけで喩えると、さしあたりこの主人公は峰不二子で、彼女の周りにいる男性陣はルパン・次元・五エ門、いや五エ門・五エ門・五エ門のように静かに、密やかに彼女を支えている。

 

 

五エ門A 横山先生

職業:美容外科

得意技:感情に走らない承認

器用さ:★★★★★

 

五エ門B 崎村

職業:風俗業

殺し文句:「あんた――俺のおふくろに似てるんだよ」

サバイバルレベル:★★★★☆

 

五エ門C 村上

職業:シェフ

武器:洞察力

忠誠心:★★★★☆

 

 

 決して表立つことはないが五エ門ABCの活躍なくして和子の復讐劇は成立しない。

 頼もしい五エ門たちに囲まれているだけで、「和子よ……幸せになったものよのう」と、なぜか天国から見守る祖母のような気持になった。

 

 五エ門たちは、彼女が美しいから手を貸しているのではない。「外科医と患者」「雇われシェフとオーナー」など「仕事だから」という部分は勿論あるのだろうけれど、利害を超えた信頼関係あってのナイスアシスト、なのだ。(ちなみに石川五エ門は私の理想の男性像でもある♡)

 

 復讐劇の顛末などはここで敢えて書き残さないが、女性にも、男性にも読んでほしいと思った一冊だった。

 

 

 

 さて、小説からは少し離れて、女性の容姿に関連することで一つ。

 

 

 ちょうどいいブス問題

 

 

 男女コンビ芸人・相席スタートのケイちゃんが、自分の位置づけとして「ちょうどいいブス」という言葉を使っている。もともとは先輩芸人から言われた言葉らしいが、初めて聞いた時は、なんてうまいことを! と、感動に近いくらい納得した。

 

 自称ブスというのはまぎれもない自虐でありながら、“ちょうどいい”が付くことで明るい自虐に一転するし、そこには希望がある。その“ちょうどよさ”は、ケイちゃんの顔を見れば「確かに!」という具合だし、単なる卑下じゃないからこそ、笑いになる。これは天才的な発明ともいえるキャッチコピーだと思う。

 

 そのケイちゃんのエッセイ『ちょうどいいブスのススメ』がドラマ化されるにあたり、世間ではタイトルを巡って大論争が起こっていた。

 目に留まったネットニュースをざっと見ると、ほとんどが否定的な意見だった。(注:今現在もそのエッセイ自体は未読)

 

 

 何がいけないのかまったく理解できなかったが、「ブス」という言葉が強すぎることからはじまり、「誰にとって」ちょうどいいのか? に論点は移っていき、さらにさらに、「ススメ」とあることで「男に迎合することを是とし、またそれを広めようとは何事か」というところまで波及していた。

 

 

 どうも、ちょうどいい=男が簡単にやれるちょうどよさ、とはき違えているらしいが、そんなの被害妄想と自意識過剰でしかないし、そういうことを声を大にして言い張るのは大抵ちょうどいいブス以下のブスだ。

 

 

 まあこの問題は、「ドラマのタイトルとして」というのが大大大前提なので、視聴率第一主義のリスクヘッジが大いにはたらいているのはわかるし、それが世の常か、と気をおさめている。

 

 

 それにしても、代替のタイトルが『人生が楽しくなる幸せの法則』って……

 

 

 センスなさすぎ!

 

 

 視聴率を考慮してのこれかと目が点になり、つまらない時代になったもんだと心の底から思った。