長い、しかも重い小説(『新生』とか『彼女が頭が悪いから』)を立て続けに読んでいると、自ら好んでしたこととはいえ消化不良を起こす。
人間の醜さ、生きることの苦しみ、辛い出来事、そんなのもうたくさんだ!
という時の助けになるのも(私の場合は)また小説で、気分を変えようと少し前に読んだこの作品を再読した。
小津映画に出てくる会社勤めのお嬢さんたちを思い出させる主人公(加奈江)が、ある男性社員に突然平手打ちを食わされる。
そんな突拍子もない事件の短い話。
「あら、そう。なら、うんとやっつけてやりなさいよ。私も応援に立つわ」
こんな台詞も小津映画っぽい。
やっつけちゃえ! という強さと可愛さの塩梅が良い。
加奈江は麻布、同僚の明子は青山の実家暮らしで、行方をくらました男を探し出そうと夜な夜な銀座を巡回するという港区女子でもある。都会的!
結果、そんなことってあるーー?! という真相を加奈江は知ることになる。
好きな女の子のスカート捲りをしていた男子が大人になるとそうなるのかもしれない。が、好意にせよ悪意にせよ、女性の顔を撲るって、今の時代だったら「やっつける」のレベルも種類も違ってくるはず。
平和な時代で良かったね。
と思いながらハッピーエンドを予想していたら、意外にもほろ苦い終わり方。
安易にすったもんだの果てに結ばれた二人というオチじゃないのがいいなあ。って、結局“ままならない話”が好きなんじゃないか、私。
奇しくもまさに「越年」のタイミングで、粛々と新しい年を迎えました。
今年も良き本に出会えますように。